創業者 山本ブログ 2016年12月19日

想いを込めて作った事業を他の人に任せるってどういう気持ちですか?

先日、この秋にNEWVERYに転職してきた人から「想いを込めて作った事業を他の人に任せるってどういう気持ちですか?」と訊かれました。せっかくなので、率直な気持ちを共有してみます。


まず、「世の中を変えたい」という気持ちがベースにあります。僕はかなり例外的な人間で、そういう理念や大義のために長期にわたって行動できてしまうタイプです。それが自分の強みの1つだと思っています。そして、世の中を変える合理的な方法として、他の人に任せる(=「事業部制の導入」と「大幅な権限移譲」)という方法を選択しています。
 
確かに人に任せると「自分だったらそうはしないなぁ」ということはあるのですが、それを言っていると世の中は変わっていかないと思っています。

ここからが重要なのですが、自分で作って自分で売ると「自己表現」に陥りがちです。自己表現に陥ると、自分の場合は社会で受け入れられる範囲が狭くなってしまうので、「作る」と「売る」を分けようと模索してきました。

例えば舞台芸術が僕は好きです。中でもピナ・バウシュ、モーリス・ベジャール、サイモン・マクバーニー、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル、マニュエル・ルグリらが好きです。しかし彼・彼女らの名前を聞いても、ほとんどの人はそれが人の名前なのか、カンパニーの名前なのかさえも分かりません。嗜好がマニアックということです。それはよく言えば尖った部分(オリジナリティ)ですが、マニアックな人が自分で作って自分で売ると、どうしても世間で受け入れられる範囲が狭くなります。

一方で、自分がしたいことは、一部のマニアに受け入れられることではありません。子ども・若者のために、世の中の当たり前を変えること、世の中の景色を変えること、新しい社会インフラを作ることです。広く売っていこう、広げていこうという時に「作った人の拘り(尖りやオリジナリティ)」が邪魔をすることはよくあることです。そういう場合に、他の人を介在させるのは有効な手段です。

音楽の世界に喩えてみましょう。NEWVERYでの自分の役割は、今は、シンガーソングライターではなく、楽曲提供者になっています。社会起業家やピュアな起業家の中には、自分で作って自分で歌うシンガーソングライターとして大ヒットを飛ばすタイプの人もいます。一方で、シンガーソングライターに拘ったために、結果としてかなり少ないリスナーのために歌い続ける人もいます。

自分は前者のような才能はないということを、かなり前に知り、自己受容してきました。自分が得意にしているのは作詞作曲です。歌うのは別の人が歌った方が、歌い手の人選を間違わなければ、より多く人の耳に届きます。だったら楽曲提供者の役割に徹して、歌うのは別の人に任せた方が、新鮮な歌詞やメロディーを考えるのが得意という自分の強みも活きるのです。

ですので「想いを込めて作った事業を他の人に任せるってどういう気持ちですか?」の答えは、「楽曲提供して自分では歌わないミュージシャンみたいな気持ち」です。スタジオで、自宅で、時にのたうち回りながら新しい歌詞とメロディーを考え、テレビやライブ会場でその曲を誰かが歌っているのを観ているような気持ちです。

話を元に戻せば、まだ世の中に存在しない子ども・若者のためになるサービス・商品を構想・創造し、ビジネスモデルを組み立て、黒字化し、何人か雇用できる状態にするまでが自分の仕事で、そこからさらにそのサービス・商品を世の中に広げていくは別の人に任せます。任せて、また子ども・若者のためになる新しいサービス・商品(新曲)を構想・創造し始めます。

作詞作曲した楽曲を自分で歌わないことには寂しい気持ちはあります。しかし、将来その楽曲が世界中で聴かれる・歌われるようになる、それが自分が10年後、20年後に望んでいる姿なので、広がっていく喜びの方が何十倍、何百倍も大きいです。

人間は自己理解が深まると、時間の使い方や他者との関係が変わります。人生を変えうるのは、自分は何者なのか、何がしたいのか、という問いに対する答えなのだと思います。